ヒキコマ散歩① 小川町

ヒキコマ散歩 ① 小川町

風格のある西光寺

武蔵の小京都と言われる小川町は、1300年の歴史を持つ和紙をはじめとした伝統産業がいくつもあり、古寺も多い。

八つある小川町ハイキングコースの一つ、「お寺と和紙のふるさとを訪ねるコース」(約8キロメートル)を1月の休日に歩いてみた。3つの古刹を巡ったが、最も絵になるのは西光寺の鐘楼だろう。山門の役割も果たしているが、2層目の低部の四周を囲む庇(ひさし)があるため3層のようにも見え、趣きがある。

本堂や、背後の仙元山の山裾と重なる風景も風格がある。鐘楼のそばにあるシダレ桜が咲く頃にまた訪れてみたい。

コース始点の東上線小川町駅前の花水木通りにある「万葉モニュメント」の一つに、新年が豊年であるようにと祈った、大伴家持の万葉集の有名な歌、「新しき年の初めの初春の今日降る雪のいやしけ吉事(よごと)」)が、西光寺の鐘楼の写真とともに掲げてあった。除夜の鐘に町民が集う光景だ。

万葉モニュメントは、万葉集の歌1首とそれにふさわしい町の名所や風俗などの写真、解説を付けたもので、小川町が2005年末に、県の補助金を得て70基設置した。この町で、鎌倉時代の学僧、仙覚(せんがく)律師が万葉集の注釈書を著したことにちなむもので、歌はNPO法人「仙覚万葉の会」が選んだ。

毎年、初詣でにぎわう大聖寺(だいしょうじ)は、このコースのハイライトの一つ。観音山の中腹にあり、鮮やかな朱色の観音堂が印象的だ。

周辺では、昔から緑泥片岩を産出した。この石で造られた、国の重要文化財、六面供養塔が大聖寺にある。南北朝時代(康永3年)に武将たちが法華経を千回唱えて供養したというだけあって、歴史の重みが伝わってきた。

石と言えば、西光寺近くを流れる槻川(つきかわ)の荒々しい岩肌が清流と相まって記憶に残る。

大聖寺からの帰りに立ち寄った埼玉伝統工芸会館では、何人もの手すき和紙の技能伝承者が語る、和紙作りへの思いが展示されており、興味深い。

ところで、京都の魅力の一つは伝統料理の美味。この点、小川町中心部には、山岡鉄舟ゆかりの禅味のご飯「忠七めし」と、花魁が伝えた蒲焼「女郎うなぎ」を供する別々の割烹旅館が並ぶほか、うどん、豆腐料理、ヤキトリの店なども多く、味の散歩の好適地でもある。 (周防洋 志木市在住)

(本記事は「東上沿線物語」に掲載されたものです)

 

Author: ヒキコマ、ハジマル。