FXにおけるスリッページ(slippage)とは「注文レート」と「実際に約定したレート」の間に発生するズレのことです。
例えば、ドル円のレートが130.10円の時に買い注文を入れたのに、実際に約定したのは130.15円だったりすることです。
意図した価格よりも5pips(5銭=0.05円)不利な価格でポジションを持ったことになります。
スリッページは発生しないことが多い
ただし、常にこのような不利なズレが起こるわけではありません。
多くの時間で、スリッページが起こらないか、起こってもごくわずかでほとんどトレードには影響がないズレしかありません。
なので、初心者の間は、あまり意識せずにトレードしている方も多いかもしれません。
しかし、実際に大きなスリッページが発生して、思っていたのと異なるレートで約定されてしまうと、とてもストレスに感じるはずです。
そのような状況はできるだけ起こらないようにしたいですよね。
実は、大きなスリッページは発生しやすいタイミングがあります。
不定期に、理由もなく、大きなスリッページが発生することは、基本的にありません。
続いて、スリッページが発生しやすいタイミングを説明します。
スリッページが発生しやすいタイミング
大きなスリッページは、相場の変動が大きい時に発生しがちです。
相場の変動は、「重要な経済指標が発表されたとき」、「重大な事件や災害が起こったとき」などに特に大きくなります。
そのような時には大きなスリッページの発生に要注意です。
スリッページが起こる原因を知っておくと、発生しやすいタイミングがわかりやすいです。
そのため、まず、FXで注文し実際にポジションが確定するまでの流れを確認しておきましょう。
以下の通りです。
- FXで注文をするときには取引プラットフォームでレートを確認し、「買う」や「売る」などのボタンをクリックやタップし、注文を指示します。
- 注文があると、FX会社のサーバーにその指示が達し、実際に「買い」や「売り」などが実行され、約定します。
- ポジションが確定し、取引プラットフォームに表示される。
この1から2の間、つまり、注文の指示がサーバーに達し、実行されてそれが確定するまでの間に、タイムラグがあります。
この注文から実行までのタイムラグがスリッページの原因です。
FXのレートは常時動いています。
そのため、注文してから、実行されるまでの間に、レートが動いてしまうことがあるのです。
例えば、注文した時(1の時)は取引プラットフォームに130.10円と表示されていたのに、サーバーで実際に実行される時(2の時)には、レートが動き130.15円となってしまった状態がスリッページです。
実際には、注文から実行までのタイムラグはごくわずかです。
なので、ほとんどの場合には、レートが動くほどの時間がありません。
このような理由であるため、価格の動きがあまり大きくないときには、スリッページはほとんど起こりません。
しかし、例えば重要指標発表直後などでは、一瞬で、数10pips動くことがあります。
つまり、このような大きな価格変動がおこる状況の時には、大きなスリッページが起こることを警戒する必要があります。
許容スリッページを設定できる
米雇用統計など、事前に予定されている重要指標の場合は、大きなスリッページを警戒することができます。
しかし、突然のニュース等での大きな変動や、それ以外でも突然の大きな値動きが発生することはありえます。
また、大きなスリッページが起こらないような状況でも、一定程度のスリッページは起こる可能性はあります。
そのように、どうしても発生してしまう可能性があるスリッページですが、一般的な取引プラットフォームには、スリッページのリスクを限定するための機能がついています。
許容スリッページ幅を設定できる機能です。
「許容するスリッページは2pips以内」といった感じで許容スリッページ幅を設定します。
すると、その許容範囲を超えるようなスリッページだと、注文が成立しないようになります。
この機能を利用すると、「思ってたのと違う価格でポジションを作ってしまった」という状況を無くすることができます。
なお、許容スリッページ幅を超えた場合は、不利な価格だけが拒否されます。
有利な方向へのスリッページの場合は、そのまま約定されます。
つまり、買い注文の場合に、価格が低い方向のスリッページが発生した場合は、許容範囲以上であっても、注文が実行されます。
許容できるスリッページ幅はどれくらいが適切か
許容するスリッページを設定できることがわかりました。
となると、「どのくらいに設定すればよいのか」という悩みが生まれます。
というか、そもそも、スリッページは小さければ小さいほど良いので、「許容しない」、つまり許容スリッページ幅を「0」に設定するのが一番良いと思う方もいるかもしれません。
しかし、これは、あまりお勧めできません。
0にするとスリッページが起こることがありませんが、ほんのちょっと価格のズレがあっても注文が成立しなくなるため、約定する頻度が下がります。
ある程度は許容するべきです。
では、どれくらいのスリッページを許容すればよいのでしょうか?
それは、適切な許容スリッページ幅はトレードスタイルによって変わります。
たとえば、数pipsを狙うようなスキャルピングをしている時に、5pipsのスリッページがあると、かなりつらいです。
しかし、数10pipから100pipを狙うようなスイングトレードの場合、それくらいのスリッページではそこまで影響が大きくないです。
なので、スキャルピングの場合は、最大でも0.5pipsまでにするのが良いです。0にしてもよいかもしれません。
デイトレードやスイングトレードの場合は、最大でも2~3pipsまでにするのが良いです。
できるだけ小さい方が良いので、最初は小さめに設定して、この範囲内で実態に合わせて調整していくのがおススメです。
ただし、通貨ペアによっては、常時、値動きが激しめの場合もあります。
このスリッページ幅では、約定拒否が多発することがあるかもしれません。
そのような場合は、約定頻度などを勘案して、少しずつ許容する幅を大きくしていきましょう。