- 一時的に勝てるけど継続的に結果が残せない
- ポジションがプラスになったらすぐに利益確定してしまう
- 損切りしないといけないのに勇気がでない
このようなFXトレーダーがやりがちな失敗は、プロスペクト理論というもので説明できます。
プロスペクト理論とは、目先にある利益を重視したり、目先の損失を回避しようとする人間の行動を説明する理論です。
FXで勝つために必要な、次のことを難しくしている原因でもあります。
ポジションに利益が出たらできるだけそれを伸ばし、利益が期待できない場合は速やかに損切りを行う。
この「利益を伸ばし、損は手早く閉じる」という行動をうまく行うため、「プロスペクト理論」で説明される人間の思考のクセを知っておくことは大切です。
今回は、プロスペクト理論について次の3つのことを説明します。
- プロスペクト理論とはどのような理論なのか
- FXにおけるプロスペクト理論とはどのようなものなのか
- プロスペクト理論により引き起こされるFXの失敗とはどのようなものなのか
FXで「なぜ負ける?」と思っている人は、ここで紹介して人間の思考のクセを意識してみると、トレードをもう少しうまく進めることができるかもしれません。
プロスペクト理論とは
プロスペクト理論は、行動経済学という分野の基礎的な理論です。
人が利益や損失を選択する際の”クセ”についての説明する内容となっています。
理論の提唱者がノーベル経済学賞を受賞した有名な理論です。
簡単に言うと、次のようなことを説明しています。
「人は、目の前にわかりやすい利益や損失があるときに、感情に邪魔され、合理的に物事を判断できない」
例えば、プロスペクト理論で説明される行動の事例として以下のようなものがあります。
どちらのケースでも、各選択肢の「期待値」は同じです。
なので、以下のように、何度も繰り返すと、選択肢にかかわらず、得られる利益や損失が同じになります。
ケース①の期待値
各選択肢を、それぞれ100回ずつやると、選択肢aは、100万×100回=1億円です。
選択肢bでは、200万円×50回=1億円と0円×50回=0円となるので合計1億円です。
ケース②の期待値
こちらの場合も同様に同じ金額となります。
選択肢aは、1万円×100回=100万円です。
選択肢bでは、2万円×50回=100万円と0円×50回=0円となるので合計100万円です。
このように、ケース①も②も「得られる利益や損失」はどちらの選択肢も同じであると期待できます。
そして、どちらのケースも選択肢aでは確実に結果が起こり、選択肢bは、起こるかどうかわからず運の要素が関わってきます。
なので、普通に考えると、堅実な人はどちらのケースでも選択肢a、ギャンブル的な人はどちらのケースでも選択肢bを選ぶのが自然に感じます。
しかし、ケース①では堅実な回答が多く選ばれ、ケース②ではギャンブル的な回答が多く選ばれるそうです。
不思議ではないですか?
これが、プロスペクト理論で説明される人間の行動のクセなんです。
なぜプロスペクト理論は重要か?
この結果から、わかるのは以下のような人間の思考のクセです。
- 利益に関しては「利益を早く確定したい」という思いが強く働く
- 損失に関しては「損失を先延ばししたい」という思いが強く働く
ケース①では、確実に利益を確定できることを優先してしまいます。
ケース②では、損失を0にできる可能性にかけてしまいます。
どちらも確率的には、得られる金額は同じで、合理的に判断すると、どちらのケースも同じ選択肢を選ぶはずなのに、目の前のものが利益か損失かで、方針が変わってしまっています。
このような人間の思考の傾向は、FXトレードにも大いに影響を与えます。
FXトレードでのプロスペクト理論
上で紹介したプロスペクト理論の参考例を、FXに当てはめてみます。
FXで実際にありそうな事例を当てはめてみました。
つまり、利益が出ているポジションは早く確定したいと考え、損失がでているポジションは様子を見たいと考える現象です。
心当たりありませんか?
プロスペクト理論により起こる失敗とは?
「コツコツドカン」という言葉を聞いたことがありますか?
“コツコツ稼いだ利益を、ドカンと吹き飛ばしてしまう。”
FXでうまく結果が出ない人がやりがちなトレードスタイルです。
つまり、次のようなトレードスタイルです。
- ちょっとプラスになったら、反転してマイナスに変わるのが心配になり、さっさとクローズしてしまう
- マイナスになったら、反転してプラスに変わるのを待ってしまい、なかなクローズすることができない。
利益は早く確定してしまい、損失の確定は先延ばしにしてしまいます。
その結果、利益は少しずつしか積みあがらず、損失は大きく減ってしまいます。
これは、プロスペクト理論の特徴そのものと言える行動です。
このようなトレードをしていると、勝ち続けることは非常に難しいです。
「ドカン」があるたびに、それまでの利益がほとんど吹き飛びます。
利益が吹き飛ぶだけなら、まだ良い方で、トレードを継続できないほどの、大きな損失になる可能性があります。
プロスペクト理論による失敗を克服するための8項目
FXで勝っていくには、プロスペクト理論で説明される、このクセを克服する必要があります。
上で説明したように、プロスペクト理論の特徴を知ったうえで、それに対抗する方法を実践します。
主に、以下の8項目を意識すると良いでしょう。
トレードルールに従う
プロスペクト理論に対抗するために最も重要なのは、感情の影響をできるだけ排除することです。
そのために、一番効果があるのが「トレードルールを決め、思考停止してそれに従う」方法です。
ポジション持ちクローズする流れは次の通りです。
- 事前に相場の動きをイメージする
- エントリーする場所、利確する場所、損切りする場所を事前に決定する
- 条件が揃ったらエントリーする
- 損切り注文を入れたら、思考停止してそれに従う
このように、事前に相場の動きをイメージし、トレードルールを決定します。
そして、そのルールに、従いましょう。
もちろん、FXトレードがうまくなるためには、トレードの検証が必要です。
しかし、それはトレードが終わった後に、行えばよいのです。
いろいろ考えるのは、ポジションをクローズした後にします。
それまでは、ルールに従い、機械のように、無感情にトレードを行いましょう。
リフレッシュして冷静さを取り戻す
プロスペクト理論とは、一言でいうと「感情的な理由で合理的な判断ができないこと」です。
なので、感情に乱れがあると、より、この傾向が強まります。
多くの人は、トレードでポジションを持つと、興奮したり、不安になったりして、平常心ではなくなってしまいます。
特に、FXを始めたばかりの時には、小さいポジションを持つだけでも、ドキドキして、冷静さを失ってしまうものです。
ポジションを持つ前は、冷静に考えることができ、合理的な戦略を立てているつもりでも、ポジションを持った途端、それまでと違う行動をとってしまうこともよくあります。
このようにポジションを持つと、それだけで平常心を失いがちです。
しかし、「大きな損失をした直後」、「損失が続いてしまっている」時などは、ポジションを持っていなくても、平常心で判断することが難しくなります。
「取り戻したい!」「もう損はできない!」「悔しい!」など、激しい感情の乱れに満たされています。
さらに、このような時にポジションを持つと、いつも以上に、「早く利益を確定したい!」、「損切りしたくない!」という判断をしてしまいがちです。
こうなったら、ほとんどの場合に、墓穴を掘り続けます。
冷静に判断できず、「ちょっと価格が上がったら、急いで買いポジションを作る」。
そして、「ちょっと価格下がったら、クローズして、売りポジションを新規で作る」。
さらに、「価格が上がったらクローズして買いポジション」。
みたいな感じで、「レンジの上限で買い、レンジの下限で売り」を繰り返します。
頑張って、もっと、長く持ち続けようと思い、「マイナスになってもクローズするのを我慢していたら、今度は反転せず、損失が拡大し続ける」、といった具合です。
このような状態で、トレードを続けるのは危険です。
一旦、気持ちのリフレッシュをすることをおすすめします。
リフレッシュにはそんなに時間は必要ありません。
一回、トレードソフトを閉じて、FX関係の情報サイトも閉じます。
そして、FXから一回距離を置きましょう。
損失の大きさにもよりますが、30分とか1時間でも、かなり、平常心を保てます。
できれば、その日は、距離を置いて、翌日、フレッシュな精神で、もう一度トレードを行えばよいのです。
ただ、口座資金の半分がなくなるような致命的なダメージを追ってしまった場合には、数日から1週間空けることが望ましいです。
私もそのような経験がありますが、3日くらいは、ずっとそのことが頭に残っています。
そこでトレードをしても、取り戻そうという気持ちが支配しており、合理的な判断はとてもできません。
しかし、4日過ぎてくると、また、「1から頑張ろう」という気持ちになることができました。
リフレッシュに適切な期間は、人それぞれの個性が影響してくると思います。
しかし、「一度、FXから離れて、距離を置くことで、リフレッシュできる」、「リフレッシュしたら、合理的な判断をしやすくなる」というのは、すべての人に共通する傾向だと思います。
テストしている気持ちでトレードを行う
目先の損得に影響されるのを排除するための心持ちです。
「資金を増やさなきゃ」、「先週よりもだいぶ増えてきた!」、「ヤバイこのトレードで利益を出さないと今日の損益はマイナスになる」、など、利益の積み上げや実績を作りたいと考えていると、感情的になりがちです。
このような時には、「テストしている気持ちでトレードする」のは効果的です。
「将来、長くFXを続けていくための、テスト期間」という気持ちで、トレードをしてみます。
「こういう時に買っちゃうと良くないのか」とか、「こういうときには頑張って持ち続けていた方が、結果的に利益になりやすいのか」など、「いろいろなやり方をテストしているだけ」みたいな気持ちでトレードを行うと冷静さを維持しやすいです。
損失が出た場合でも、1回のトレードごとの結果に喜んだり悲しんだりするのはやめましょう。
「なるほどね~」みたいな感じで、一つ新しい知識が増えた、くらいの受け取り方をするとよいです。
第3者的な気持ちでトレードを行う
これも、余計な感情を排除するために有効な方法です。
口座資金が自分の財布のお金のように感じると、少しの利益や損失で感情的になりがちです。
そうではなく、「自分のお金ではない」、「お金じゃなくてただの点数」みたいに、ちょっと、第3者的な位置からトレードを行うと、冷静さを保つことができます。
ただし、大きな損失をした後、などには、多分太刀打ちできません。
日常のトレードをこのような感覚で行うと、「早すぎる利確をしてしまいがち」、「損切りが遅れがち」という癖を治せると思います。
価格は波動であることを理解する
上がったり下がったりしながら、価格は動きます。
なので、ポジションを持った時の狙いがあっていたとしても、一時的にマイナスになることもあります。
下げ始めたと思ったら、上げ始めることも、価格の普通の動きです。
なので、多少、利益がでたことで、すぐにクローズするのはやめましょう。
ポジションサイズを小さくする
小さいポジションサイズであれば、平常心でいられる場合が多いです。
得られる利益が小さいが、損失も小さいようなポジションサイズでトレードをしていると、結構うまくできるかもしれません。
しかし、ポジションサイズを大きくしていくと、途端に、上手くいかなくなります。
ポジションが大きくなり、利益が損失が大きくなってくると、それまではできていた、冷静な判断ができず、プロスペクト理論で説明される行動をとり始めます。
つまり、利益を伸ばせず、損失を拡大させてしまいます。
このような場合、口座の資金額や、経験値に対してポジションサイズが大きすぎるようです。
欲張らずに、冷静さ保てるポジションサイズを選択するべきです。
長時間足でトレード戦略を立てる
1分足や5分足など、短い時間足のチャートは非常に激しく動きます。
ほとんどランダムのように、激しく上がったり下がったりしながら、動き続けます。
このような時間足でトレードをしていると、「ポジションの評価損益が、プラスになってると思ったら、マイナスになり、「あー、どうしよう」と思っていたら、反転してまたプラスになった。」ということが、頻繁に起こります。
相当しっかりと、自分の考え方を整理しておかないと、徐々に感情が揺らぎ始め、冷静さが失われます。
「自分の考え方」とは、「ここまで値が動いたらこうしよう」といった、トレード方針のことです。
注文を入れて、後は、チャートを見ずに、ほったらかしておくのが、良いですが、そのような激しい値動きを見ていると、チャートから離れられない状況に陥りがちです。
このような状況を防ぐためには、トレードスタイルを、長時間足をベースとしたものに変更すると良いです。
4時間足や日足などでは、チャートはある程度方向性を持った値動きします。
このような時間足のチャートを元に、基本的なトレード方針を立てて、長い目線、広い値幅でトレードを行うと、感情のぶれが発生しづらくなります。
難しいことを考えない
書籍やwebサイトから、FXの知識をたくさん吸収していくと、やらなければならない(と思われる)ことが多くなってきます。
エントリー時に確認すること、ポジションサイズのコントロール、ポジションの一部利確、ファンダメンタルの確認など、情報がどんどん増えていきます。
いろいろ考えていると、おそらく、混乱し、感情が乱れ始めます。
すると、合理的な判断が難しくなってきます。
いろいろ考えだすと、プロスペクト理論の罠にはまります。。
まずは、基本的なことを、確実に実行するようにしましょう。
難しいテクニックはプロや実績豊富な専業トレーダーなどができるレベルのことだと思った方が良いです。
基本的なことをしっかりやっていけば、負け続けることはありません。
口座資金は、「現状維持から徐々に増加」くらいまでは、それで問題ありません。
そこから、さらに、精度を高める必要が出てきた人だけが、さらに難しい知識を習得することを目指せば良いと思います。
むずかしいことをしない。シンプルにトレードを行いましょう。