ある程度トレードを経験すると「損切りしなきゃいけないけど、ここで切ったら反転しそうで切れない!」という感情に悩まされます。
今回は、この感情に打ち勝つ方法を紹介します。
損切りの目的
「FXでは損切りが非常に大切」です。
損切りとは、評価損失が出ているポジションを、クローズして、損失を確定することです。
評価損失とは、そのポジションに発生中の損失です。まだ、ポジションを持ったままなので、もし、ここから価格が反転すると損失がなくなり、利益に変わるかもしれない状態です
一般に、FXトレードでは、ポジションを持つ前に、「ここまで下がったら、一旦ポジションを切ろう」と考える水準を損切りラインとして設定します。
損切りを設定する主な理由はポジションを持った時点と相場の方向が変わったと判断されるからです。
例えば、上昇トレンドと思って買いポジションを持ったのに、下降トレンドになってしまったら、損失が拡大し続けてしまいます。
損切りの流れ
損切り価格を設定し、損切りを行うまでの流れは以下の通りです。
売りポジションを新規に持つ場合の例です。
①ポジションを持つ前提を確認する
- 「上値を切り下げながら価格が下降している」通貨ペアがある
- 「このまましばらく価格が下降するだろう」という前提を立てる
②ポジションを持つ水準を決定する
- この前提の元、売りポジションを新規に持つことを検討する
- 抵抗線(レジスタンスライン)に達する水準で売りポジションを建てることにする
③新規に売りポジションを作る
- 抵抗線(レジスタンスライン)まで価格が上がってきたので売りでエントリーする
④損切りラインを設定する
- 売りポジションを持った後、価格が上昇した場合のことを考える
- 現在の前提が崩れる水準を、損切りラインに設定する
相場は上下に変動しながら動きます。
一直線に下降することはほとんどありません。
売りポジションを持った後に、ある程度価格が上昇することは頻繁に起こります。
その場合は、評価損失が発生しますが、黙って見守るしかありません。
しかし、価格の上げ幅が大きく、以下の画像のように一つ前の上値を上回ったらどうでしょう。
これでは、「上値を切り下げている」状況ではなくなります。
すると、売りエントリーした時の「このまましばらく価格が下降するだろう」という前提が崩れることとなります。
もはや、売りポジションを持っている理由がなくなるのです。
このように前提が崩れてしまったら、新たな前提のもと、戦略を立て直さなければなりません。
この、戦略を立て直すことが求められる水準に損切りラインを設定します。
⑤損切りを行う
この水準まで価格が達したら、損失が出ているポジションを切って、損失を確定させます。
そして、新たな戦略のもと、もう一回、トレードをやり直します。
ポジションを作る際に、①~④のような検討を行い、「一旦、切ってしまおう」という水準に損切り注文をしておくのが望ましいです。
そして、そこまで価格が達してしまったら、ポジションが自動的にクローズされるのを受け入れるしかありません。
もし、損切りをしなかったら、以下のように、そのままどんどん価格が逆行し、損失が拡大し続ける可能性があります。
損切りは難しい
文章で見ると、損切りの手順は、難しく感じないかもしれません。
しかし、FXを実際にやってみると「損切りができない」という悩みにぶつかります。
「損切りができない」理由はいくつかあります。
FXを始めた当初は「ちょっとでも資金が減るのが嫌で、損切りできない」人が多いと思います。
しかし、トレードの経験が増えていくと、ちょっと厄介な「損切りできない」理由が生まれます。
それは、実際に経験したことや知っている知識を根拠としたものです。
例えば、次のような根拠です。
これまで、損切りしなくてもうまくいってるしなー・・・
このチャートの形は絶対反転すると思う!
過去に、損切りした直後に反転したことが何度かあったな。
切らなければプラスになってた。
多分、今回も、ここで切ると損するャートの形は絶対反転すると思う!
という風に、実際に経験したことや知っている知識を良いようにとらえたことにより作り上げられた根拠です。
私的には、特に最後の理由にしつこく悩まされることとなりました。
まだ、FX初心者の場合は、よくわからないかもしれませんが、トレードを繰り返していくと、「あー、損切りしたとたん、反転して、そのまま持っていたら利益が出ていたのに!」という経験が絶対に出現します。
以下のような状況です。
指示線(サポートライン)付近で新規に買いポジションを作った
しかし、その後価格が下がり始めた
一つ前の下値を下回っても下がり続けたので、ポジションをクローズした
しかし、損切りしたとたん、反転し、価格が上昇し始めた。損切りしなかったら利益がでていたため、非常に悔しい
このような悔しい経験は、いつまでも記憶に残り続けます。
例えば、その後のトレードで、大きな評価損失を抱えたポジションを持っている場面。
損切り水準が近づいてきたときに、この経験が頭に浮かび、「多分、損切りしたら、また反転し始める」という思いに支配されます。
その結果、「そろそろ反転しそう」「損切りしなかったら反転して利益になるはず」「損切りは一旦保留にしよう」と考えて、損切りができなくなるのです。
「損切りできない」ことが引き起こす悲劇
このような思考は、以下のような大きな失敗を引き起こす可能性があります。
買いポジションを持ったものの価格が下がり、損切り注文に近づいてきている状況です。
損切り注文を入れた価格が近づいてきた。
でも、今のチャートを見ているとその辺で反転しそう。一旦損切り注文を取り消して様子を見よう
ポジションを持った時に考えていた損切りラインを守らなかった
取り消し前の損切り水準に達した。
しかし、価格はその後も下がり続ける。一直線ではなく、戻り目を作りながら下がっていく。
どうしよう。どんどん下がっていく。
損失が100pipsを超えそう。最初は60pipsを損切りラインにしていたからかなり膨らんでる。
さっきのところで切っていればよかった。。。
そろそろ切らないといけないかな。どこで切ればいいだろう
100pipsで切るか・・・
マイナス100pipsを新たな損切りラインに設定した。
しかし、すぐにその価格に近づいてきた。
損切りしないとな。
でも、以前もこんなことあったな。
そういえば、その時、切ったとたんに反転して、めっちゃ悔しかった!
そもそも長期足を見ると「まだ上昇トレンドが続いている」と判断することもできる。
そういう目で見ると、今回も、さすがにそろそろ反転しそう。
一旦損切りは保留にして、様子を見るか
新たに設定した損切りラインを守らなかった。
しかし、その後もさらに逆行し続ける。
一直線ではなく、戻り目を作りながら下がっていく。
。
どうしよう。どんどん下がっていく。
損失が150pipsを超えそう。
最初は60pipsを損切りラインにしていたからかなり膨らんでる。さっきのところで切っていればよかった。。。
さすがにそそろそ切らないと。。。
でも、だいぶ下がってきたし、そろそろ反転しそう
なんか、価格の戻りの勢いが強くなってきている気がする
一回、買いポジションを追加してみるか
なんとなくポジションを増やしてしまった(ナンピンした)。
買いポジションを追加した直後に、ちょっと価格が上昇する。
おっ。いい感じ。やっぱりここから反転するんだ
買い増ししよう!
一時的な値動きを都合の良いように解釈して、さらにポジションを増やしてしまった。
さらに買いポジションを追加するものの、ただの戻り目だったため、また下げ始める。
買い増ししたため、ロット数も大きくなり、ちょっとした値動きで、損益が大きく変わる。
あーもうさすがに切らないと
でも、今切ったら絶対反転しそう
どうしよう、損失がかなり大きくなってきた・・・。最初に切っていれば・・・
相場の様子が変わるように願い始める。
一旦、トレードソフトを切り、チャートから目を離す。
時間をおくと、少し落ち着く。改めてチャートを見ると、さらに損失が広がっている。
・・・・(無言でクローズ)
損切りできず、結果的に大きな損失を発生させてしまうという状況です。
損切りできるようになる考え方
私もこの感情によく苦しめられました。
ただし、この感情の構造はいたってシンプルです。
過去の経験を根拠に「損切りしなければ、反転して損しなくなるかも」というぼんやりとした期待が働いています。
つまり、損切りしたら損するという感情です。
「損切りしたら損する」というのは当たり前のようですが、実はそうではありません。
損切りすることによって得することがあるのです。
そして、それをデータとして確認することで、この「損切りしたら損する」という感情を排除することができます。
損切りできるようになるための分析のやり方
私は、取引履歴を見ながら、次のような分析を行いました。
トレードを以下の3タイプに分類します。
タイプ1:損切りラインを決めて、その通りに損切りしたトレード
タイプ2:損切りラインを守らなかったため、損失が大きくなってしまったトレード
タイプ3:損切りラインを守らなかったため、反転して結果的に利益が出たトレード
そして、それぞれのタイプに対して、クローズした後のチャートの動きを確認します。
すると、以下の二つのことを確認できます。
- 「損切りしなかったら利益になってた」トレードがそんなに多くないこと
- 「損切りしたことで損失が小さく抑えることができた」トレードが結構多いこと
実際の作業手順は以下の通りです。
スイングトレードであれば、1~2日後くらいまでの動きを観察します。
①当初決めた通りに損切りしたトレード
「頑張って損切りしたトレード」を探します。
そして、「もし損切りせずに持ち続けていたらどうなっていたのか」を調べていきます。
そのトレードはどのように変わっていたでしょうか?
以下の2パターンに分かれます。
- 反転して利益に変わっていた
- さらに損失が拡大していた
「損切りを無視して持ち続けていたら利益になっていた」トレードはどの程度ありましたか?
②損切りしなかったため、損失が大きくなってしまったトレード
「損切りできずに大損失となったトレード」や「最初に設定した損切り注文を取り消してしまったトレード」を探します。
そして「実際に当初決めた通りに損切りしていたらどうなっていたのか」を調べていきます。
どの程度、損失が軽減されていたでしょうか?
③損切りしなかったため、反転して結果的に利益が出たトレード
「最初に設定した損切り注文を取り消したため結果的にプラスに変わったトレード」を探します。
そして「実際に当初決めた通りに損切りしていたらどうなっていたのか」を調べていきます。
利益が出ていたトレードが損失に変わるはずです。
どの程度、損失が大きくなったでしょうか?
分析結果の確認方法
この場合の取引履歴の確認は簡単で大丈夫です。
どのようなトレードソフトであっても、過去の取引一覧を確認することができると思います。
このように、過去のトレードを見ていくと、「損切りしていなかったら利益になってた!」という場面は案外少ないことがわかるはずです。
また、当初決定した損切りを、適切に実行していた場合に、合計の損益はどのようになっていたか計算してみます。
そうすると、ちゃんと損切りしていた方が、損益が良いという結果になるのではないでしょうか。
この結果には理由があります。
それは、トレンドは一定期間同じ方向に進むためです。
ある程度、一定方向に進みだすと、しばらくその方向に進み続ける可能性が高いです。
そして、冒頭で書いたように損切りは、ポジションを持った時点と相場の方向が変わったと判断される水準に設定します。
つまり、「これくらい動き始めたら、ある程度はそっち方向に進み始めるだろう」と考えられる水準が損切りラインとなります。
なので、そこで切らなければ、さらにその方向に進み続ける可能性の方が高いのです。
つまり、損失が大きくなる可能性の方が高いのです。
逆に、そこで切っていれば、損失は小さくなっていた可能性が大きいです。
「損切りしていなければ、利益になっていた」ことがあまりないこと
総合的にみると「損切りしたほうが利益になる」こと
この2つの事実をデータとして確認すると、「反転しそうで損切りできない!」という気持ちが小さくなります。
ただし、もし損切りしなければ利益になることが、頻繁に起こっていたら、ポジションを持つタイミングやトレード期間に対する損切りラインの設定がよくない可能性があります。
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