FXのスワップポイントとは、ポジションを持っている間、1日ごとに付加されるお金のことです。
「ポイント」という名前ですが、通常の損益として扱われます。
価格変動による損益とは別に、ポジションを保有している間、毎日合計され、ポジションを決済した時に損益に加算されます。
1日ごとにボーナスのように付加される
スワップポイントは、1日ごとに発生し、決済時に口座に反映されます。
例えば、「ドル円を1万通貨のポジションを10日間保有し場合、1日あたり50円ずつスワップポイントが発生し、決済時に10日分のスワップポイントである500円が損益に加算される」といった感じです。
発生するスワップポイントは「通貨ペア」や「FX会社」、「時期」等により変化します。
また、スワップポイントはプラスになる場合ばかりではなく、マイナスになる場合もあります。
1日で付加されるスワップポイントは小さいですが、保有日数分合算されるので、長期にわたって保有し続けたポジションでは、無視できないほどの金額になる事もあります。
このように、スワップポイントは毎日ボーナスのように付加されることがあります。
なぜ、そのようなことが起こるのでしょうか?
続いて、スワップポイントの原理や仕組みを説明します。
スワップポイントの仕組み
スワップポイントは、2国間の政策金利差を元に計算されます。
金利とは、お金を貸したときの利息の割合です。
政策金利とは、中央銀行(日本銀行など)が一般の銀行にお金を貸し付ける際の金利です。 一番わかりやすいところでは、銀行にお金を預けたときの利息に影響します。
通貨(円、ドルなど)は、それぞれ「政策金利」が設定されており、景気の調整などのため増減されます。
基本的な考え方としては、金利が低いと、お金を預けているだけでは利益が少ないので、もっと利回りが高い投資などにお金が回ります。
逆に、金利が高いと、お金を預けておくだけでも一定の利益が出るので、お金をできるだけ持ち続けるようになります。その結果、景気が抑制されます。
このように、景気の調整等のために、各国の意向に応じて、政策金利が決定されるため、政策金利が高い国と低い国が発生しています。
金利差は、以下のように計算します。
買った通貨の政策金利-売った通貨の政策金利=金利差
スワップポイントは金利差を元に計算されるので、高金利の通貨を買い、低金利の通貨を売った場合、金利差が大きくなり、得られるスワップポイントも大きくなります。
例えば、高金利の通貨として、メキシコペソがあります。
メキシコペソの政策金利は、7.75%です(2022年7月現在)。
一方、日本円は世界屈指の低金利通貨です。
日本円の政策金利は、-0.1%(2022年7月現在)。
日本円はマイナス金利と言って、お金を預けると逆にマイナスとなります。
メキシコペソ/日本円(MXN/JPY)で買いポジションでは、以下のような取引をしています。
- メキシコペソを買い
- 日本円を売り
つまり、以下のような計算になり、金利差は7.85%です。
7.75-(-0.1)=7.85
この金利差に応じてスワップポイントが発生します。
どれくらいつく?
スワップポイントがどれくらい発生するかは、FX会社によって異なります。
各国の政策金利は、もちろん、だれにとっても同じです。
しかし、スワップポイントは、その金利差を元にFX会社がそれぞれ決定するため、FX会社の方針などにより少しずつ違いがでてきます。
発生するスワップポイントの一例として、外貨exのスワップポイントを確認すると、以下のようになっています。2022年8月25日の数値です。
- ドル円は買い1万通貨で1日93円
- ユーロ円は買い1万通貨で1日9円
- オーストラリアドル円は買い1万通貨で1日62円
このようにスワップポイントは通貨ペアで大きく異なります。
どの会社でも一緒?
繰り返しになりますが、発生するスワップポイントはFX会社によって異なります。
スワップポイントを特に重視したい場合は、高めに設定している会社をしっかり確認する必要があります。
「スワップポイントは特に重視していないけど、どうせもらえるなら高い方がいいのでは」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、スワップポイントの大きさは、FX会社の運営方針により決定されています。
スワップポイントをそこまで大きくしていない会社は、その分スプレッドなど他のところに力を入れているかもしれません。
「スプレッド」、「スワップポイント」、「それ以外のサービス環境」など、あなたが重視しているポイントに合わせてFX会社を選ぶと良いでしょう。
毎日つく?
スワップポイントは、日をまたいだタイミング(オーバーナイト)で発生します。
FXの場合、日をまたぐとは、基本的にニューヨーク時間がクローズする時間で、日本時間の場合、6時55分(冬時間)もしくは5時55分(夏時間)です。
また、スワップポイントには以下の特徴があります。
- 発生してから数日後に付与される
- 土日には発生するけど付与されない
※付与とは、発生したスワップポイントが、トレーダーの口座に反映されることです。
このような事情により、週のうち1日に3日分まとめて付加されます(水曜日が一般的です)。
それ以外の平日には1日分が付加されます。
土日分と同じく、祝祭日分も、別日にまとめて付与されます。
また、オーバーナイトするタイミングで付加される特性のため、短時間保有するだけでつくことはありません。
つまり、スキャルピングやデイトレードなどで日中に短期間保有したとしても、スワップポイントは付与されません。
発生日にポジションを持っていたかどうかではなく、付与日に持っているポジションに応じてスワップポイントが付与されます。
例えば、水曜日に土日分もまとめて3日間分付加されると説明しましたが、金曜日から月曜日にかけてポジションを持っている必要はありません。
火曜から水曜日にかけてポジションを持っていれば、3日分のスワップポイントが付与されます。
とりあえずポジションを持っていれば得するの?
つまり、ポジションを持っていれば、スワップポイントが毎日発生して、得すると考えて良いのでしょうか?
決して、そういうわけではありません。
理由は2つあります。
1つ目は、スワップポイントがマイナスの場合もあるからです。
2つ目は、長期保有によるリスクです。
それぞれ説明します。
スワップポイントはマイナスもある
ここまで、スワップポイントがプラスになることを例として説明してきました。
しかし、スワップポイントがマイナスになる場合もあります。
スワップポイントは、買いポジションと売りポジションのどちらでも発生します。
そして、基本的に、片方がプラスだったら、もう片方はマイナスになります。
繰り返しになりますが、スワップポイントは、通貨間の政策金利差を根拠として計算されます。
買った通貨の政策金利-売った通貨の政策金利=金利差
もし、買った通貨より売った通貨の政策金利の方が大きければ、金利差はマイナスです。
ドル円の場合、ドルの政策金利が円よりも大きいため、ドルを買う場合は金利差はプラス、ドルを売る場合は金利差がマイナスになります。
この金利差によって計算されるドル円のスワップポイントは、「買いポジションではプラスされる、一方、売りポジションではマイナスされる」ということになります。
さらに、政策金利が低い通貨同士のペアの場合、FX会社によってはどちらともマイナスの場合もあります。
つまり、スワップポイントで絶対にプラスになるわけではありません。
プラスのスワップポイントを得たいのであれば、自身が利用するFX会社のスワップポイントを確認し、プラスになる通貨ペアのポジションを持つ必要があります。
長期保有によるリスク
しっかりとプラスのスワップポイントが発生する通貨ペアのポジションを選択すれば、1日ごとに利益が積み重なります。
そうであれば、一生懸命、トレードを繰り返すよりも、そのようなポジションをずっと保有する方が簡単に稼げそうな気がします。
しかし、安易にそのような方法を選択することは危険です。
理由は、為替変動による損失が、スワップポイントで得られる利益を大きく上回るリスクがあるためです。
通常のトレードで得られる利益と比べると、スワップポイントの大きさは、とても小さいです。
そのため、長期間かけてコツコツとスワップポイントを増やしても、為替変動によってそれをはるかに上回る損失を被る可能性があります。
具体的な数値を使って説明します。
ドル円を例として使用します。
この通貨ペアは、2022年8月時点で、両国間の政策金利の差が大きくなっており、スワップポイントが大きくなっています。
FX会社によりますが、高い会社ではスワップポイントが、1万通貨の買いポジションで、「約90円/1日」が発生しています。
もし、3か月間(約90日間)このポジションを持ち続けるとスワップポイントの合計は約8100円となります。
pips換算では約81pipsの利益です。
続いて、為替変動による損益を考えてみましょう。
この100日間、為替変動が全くなかった場合には、約90pipsの利益が得られます。
しかし、そういう可能性は小さく、逆に、90pipsをはるかに超える変動が起こることもあります。
例えば、今と同じく金利差が大きかった2017年12月~2018年2月の3か月間で約8円下がっています。
pips換算では約800pipsの損失です。
1万通貨の買いポジションだと、スワップポイントで約9,000円獲得できますが、為替変動分で約80,000円の損失が発生します。
差し引き、71,000円のマイナスです。
もちろん、為替変動がプラスの方向になることもありますし、大きくマイナスになったとしても、長期に持ち続けると、戻ってくる可能性もあります。
しかし、戻ってこない可能性や、さらにマイナス方向に進み続ける可能性もあります。
その場合、大きな損失をスワップポイントだけで相殺するのは難しい状況になる可能性があります。
スワップポイント狙いで運用する場合の考え方
このようにスワップポイント狙いの長期保有はリスクがあります。
しかし、スワップポイントは、日にちがたてばたつほど、着実に積みあがっていきます。
そのため、超長期で持ち続けるほど、相殺できる可能性が高まります。
まず、長期保有で発生するリスクを整理します。
例えば、ドル円1日0.9pipsの場合、1年間持ち続けると、328pipとなります。
1万通貨だと32800円です。
2年持ち続けると、65700円(657pips)です。
これだけ見ると、とても良いように思えます。
しかし、2年間も持ち続けると、ほんとにどれだけ、レートが動くかわかりません。
2年もあれば、1000pips以上価格が動いていることも普通に考えられます。
逆行していたら、運よく、スワップポイント内で価格差が収まっていないと、利益になりません。
もちろん、プラスの方向に価格が動いてスワップポイントに加えて価格差分の利益を得られる可能性もあります。
しかし、注意しないといけないのが、この間、このポジションに使用した証拠金が利用できないということです。
つまり、通常通りこの証拠金を使用して、トレードを行っていれば、得られたはずの利益を得られていない、という風に考える必要があります。
つまり、スワップポイントを長期に持ち続けることのリスクは以下の通りです。
- スワップポイントでは、相殺できない損失になる可能性がかなりある。相殺できるレートになるまで待ち続けなければならない。
- 長期間持ち続けて利益になったとしても、その間証拠金を活用できない。証拠金を使用してトレードをしていれば、得られたはずの利益を得られていない可能性がある。
逆に、これらの点が解消できるのであれば、スワップポイント狙いで保有し続けることが良い戦略になる場合があります。
具体的には、以下のような場合です。
- とても多くの資産があり、大きな価格変動があっても耐えられる
- FXトレードを行うための証拠金を別途確保できる
実際に、実際にスワップポイント狙いで長期投資するトレーダーもいるようです。